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「親も人生を楽しむ権利がある」〜2019年12月21日・倉光洋平先生講演会のご報告 [活動報告]

あけましておめでとうございます。

会員の皆さま、それぞれよい新年をお迎えになられましたでしょうか。

今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。


さて、大変遅くなってしまいましたが、昨年12月21日(土)に、さくら国際高等学校東京校にて、桜の会主催による講演会「『「子どもが一歩を踏み出そうとするとき」〜本人の意欲はどのように育まれるか〜』」を開催いたしましたので、そのご報告をいたします。

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講師として、臨床心理士・公認心理師の倉光洋平先生をお迎えしました。

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倉光先生は、大学院時代から”ひきこもり”を研究テーマとなさり、ご自身のライフワークとして、長年”ひきこもり”の本人やその家族の相談を受けるなど、「ひきこもらざるを得ない若者」の気持ちに寄り添い続ける活動を続けてこられました。

現在は、公益社団法人・青少年健康センター「茗荷谷クラブ」のスタッフとして活動していらっしゃるほか、文京区・台東区・世田谷区・葛飾区からの委託により、本人やご家族の相談にのっていらっしゃいます。


当日の受講参加者は64名、5階ホールがほぼ満員になるほどの盛況ぶりでした。

特に、在校生保護者の皆さまが多くご参加くださり、テーマへの関心の高さが伺えました。

倉光先生は、豊富な臨床経験に基づき、ご自身のご体験もふまえながら、”ひきこもり”本人の心情や、現代社会が抱えている問題などを、丁寧に分かりやすくお話しくださいました。

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以下、講演内容を簡単にまとめてお伝えしますね。

【倉光洋平先生講演会〜「子どもが一歩を踏み出そうとするとき」〜本人の意欲はどのように育まれるか〜】


《講演の流れ》
1. 子供に向き合う上で、頭の片隅にあるとよいウンチク
2. 本人を理解すること・想像すること
3.質疑応答

《講演抄録》
■若者を取り巻く世代環境や社会状況、人間関係の傾向が大きく変化。「優劣競争を重視する社会」「コミュニケーション重視社会」になり、生きづらくなっている。

■特に心身の発達がアンバランスな思春期では、自分の内面をうまく語れないことにより、不安や怖さ、葛藤による無気力が生じる。その不安や葛藤を、「ひきこもり」や「不登校」などで解消していると考えられる。人によっては、ゲームに何時間も依存する形で、内面の不安を何とか処理しているケースも多い。

■特に、発達障害などでこだわりが強い人は、強大な不安や葛藤に苛まれ、ゲームなどに頼らざるを得ないという感覚が強くあると思う。

■内なる恐怖や葛藤が解消しきれず、本人の心身に不調が現れたとき、本人の状態や気持ちをどう理解し、寄り添い、接していくかがポイント。

■「引きこもり」は、自立へ至るプロセスの一つであり、その現れ方は、一人一人違う。だから、本人や家族へ対する向き合い方も、それぞれ違ってくる。これをすればよいというような単純な解決方法はない。

■「意欲がない、出ない」ということをよく言われるが、基本的に「意欲」というものは、他者との関わりから生じてくるもの。

その根拠となるのが『マズローの欲求5段階説』。
1.「生理的欲求」:先に進むために衣食住が確保されている
2.「安全の欲求」:自己実現のために脅かされない環境が確保されている
3.「所属と愛の欲求」:社会や家族の中で一員なのだという意識を持てる環境がある
4.「承認欲求」:他者から承認されて(親や友人含めて)いく形で自分の存在価値を見出せる
5.「自己実現の欲求」:自分のやりたいことが見えてくる

衣食住が満たされ、安全な場所が確保され、家族や社会との安心できる関係があり、自分の存在価値を自分で認めることができて初めて、「意欲」が生じてくる。

■引きこもっている若者だけでなく、全般に「思春期・青年期」の時期が長くなっている。その意味でも、本人が自立するまでの「ワンクッションの時期」が必要。その「ワンクッション」の時期に、どのように親が関わるかが、更に重要になっている。

■短期決戦で本人をなんとかしなくてはと焦るあまり、本人の不安に対して親がさらに不安で煽ってしまい、よけいにこじれてしまうケースが多くある。大事なのは、行きつ戻りつしながら「ある程度長引くだろうという覚悟をする」こと。

■不調の出方にも変化がある。その変化したサインを見逃さず、本人が安心できるように丹念に関わっていくことが大事。

■親は子どものことを「見守る」というよりも、「側にいて触れる」という距離感が適切なのでは。「見守る」だと、何も働きかけないようでもあり、じっと見つ続けているようでもある。そばで気配を感じながら「触れる」というくらいがよいと思う。

■「ひきこもり」は、決して本人だけの問題ではない。本人を取り巻く家族環境の問題も一緒に考えることが必要。協力して安心できる関係づくりが何より大事である。

■「親も人生を楽しむ権利はある」「親も活動を制限しない」ことが大事。何かやりたかったことに、親が取り組み、楽しんでいる姿は、本人に良い影響を与える。さらに、その姿は社会で生きていくときの手本となり、本人が自立した後の生活への支えにもなる。なにより、親が人生を愉しむことは、家庭内の「ゆとり」にもつながる。




「本人と環境のつながりを変えながら、『自分はこのままで大丈夫だ』と言う安心感を得られるか、どうしたら自分らしく生きられるか、その方法を、本人に寄り添いながら一緒に探っていく対応が大事だと思います。」と、最後に倉光先生はおっしゃっていました。

「こういう講演会はあまり得意ではなくて…」とおっしゃっていたものの、あらかじめお願いしていた質問にも一つ一つ丁寧にお答えくださり、訥々とした語り口の中に、”ひきこもり”本人やそのご家族への深い愛情と、温かな眼差し、そしてご自身のご活動に対する静かな信念が感じられる講演でした。


ご参加くださった皆さまからのアンケートを、一部抜粋してご紹介します。


*日々悩んでいることの解決のヒントが見つかったように思います。講演の内容と子供や家庭のことを見比べて、考えていくキッカケになりました。ありがとうございました。

*今まで見守るという事を何度も聞いていましたが、見守るって?これで良いのという気持ちでした。「ふれる」という言葉におきかえれば何となくわかった気がします。今回の講演を聴き初心を忘れていた事に気付かされました。

*一般的な話と具体的な事例のバランスが絶妙でした。求めていた情報がドンピシャリでいただけました。先生の落ちついた語り口も心にしみました。このような機会を設けてくださり感謝しております。ありがとうございました。

*「正論、説得、説教は意欲を奪う」ということを教えて頂けて良かったです。どうしても、現状に不安を持ってしまって、こうあるべきと言ってしまいがちなので、よき理解者になれるよう努めます。

*すごく分かりやすく、発達障害でも少しずつ成長変化していくことが、これからの力になりました。ありがとうございました。

*家族との関係性を見直したいと思います。特に父親とのかかわりについて。

*ひきこもり、不登校の子の心理が良くわかりました。親として出来る支援をしていきたいと思います。ありがとうございました。

*本人の不安、怖さを想像することが親に必要だとお話があり、印象に残りました。

*子どもと家庭でのびのびと過ごすことができるという日常を、まず目標にしたいと思います。ありがとうございました。




倉光先生、そしてご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

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なお、倉光先生へのご相談をご希望の方は、直接「茗荷谷クラブ」へお問い合わせください。
公益社団法人・青少年健康センター「茗荷谷クラブ」


桜の会では、これからも、会員の皆さまのお役に立つような講演会・集いなどを企画してまいります。

「こんな講演を聴きたい」「こういう企画をしてほしい」など、ご希望がありましたら、どうぞ遠慮なくお知らせください。


「桜の会」連絡先

sakuranokai_renrakuアットマークyahoo.co.jp

(「アットマーク」を「@」に書き換えて送信してください)

Tel 03-3370-0718(さくら国際高等学校東京校 桜の会ご担当:神尾先生)

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